絶縁膜界面の構造とデバイス特性 |
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近年、Al蒸着膜の陽極酸化による酸化アルミニウムとアルキルホスホン酸単分子膜の組み合わせを用いたゲート絶縁膜により、製作が容易で低電圧駆動可能な有機トランジスタ(OFET)が報告され注目を集めている。この酸化アルミニウム上のアルキルホスホン酸単分子膜の分子配向と、トランジスタの特性との関連に着目して解析を進めた。 浸漬法、スピンコート法により酸化アルミニウム上に作成したオクタデシルホスホン酸(ODPA)単分子膜のSSP偏光組み合わせで測定したCH伸縮領域のSFGスペクトルを示す。ODPA溶液に浸漬して作成した単分子膜では、2881 cm-1と2944 cm-1にアルキル末端のメチル基由来のCH3対称伸縮とフェルミ共鳴に由来する振動が観測される。これに対して、同溶液を酸化アルミニウム上にスピンコートして作成した基板では、CH3由来の振動に加え、2860 cm-1と2923 cm-1にそれぞれCH2対称伸縮、逆対称伸縮振動が見られる。 この単分子膜基板上にポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を乗せてOFETを作成すると、移動度のデータのバラツキが、浸漬法>スピンコート法となる。両者の基板の表面自由エネルギーは、浸漬法<スピンコートとなっており、スピンコートで作製したODPA単分子膜の表面自由エネルギーがP3HTの表面自由エネルギーにやや近い値を示す。このことは、有機半導体界面での接合における接着仕事の関係で説明することができる。異種材料の接合においては、両者の表面自由エネルギーが近いほどよく接着することが知られている。浸漬法で作製したODPA単分子膜はCH3末端が表面に集まるため表面自由エネルギーが下がり、P3HTの表面自由エネルギーとの差が大きく、分子レベルでの接着性が低下している。このことがデバイスとして作成した際の移動度のバラツキとなって表れたと考えられる。また、各デバイスのしきい値電圧もスピンコート法で作製したOFETの方が低下しており、膜配向の制御においては、異種材料の接合に際しての界面自由エネルギーを考慮することが重要であることが示唆された。 C. Katagiri, K. Akaike, T. Miyamae,Org. Electron.,86, (2020) 105928. |
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