高分子界面の研究



高分子の表面・界面は、親水性・疎水性、摩擦、接着、生体適合性など、求める用途に応じて多様な形態をとり得ます。また、接する環境や条件によっても分子の配向を変えることで様々な機能を発現します。

ポリイミド配向膜表面の官能基の配向角の定量的解析と液晶プレチルト角発現の解析

ラビング処理と直線偏光UV照射ポリイミド配向
膜のSFG強度の面内方位角依存性
 ディスプレイとして用いられる液晶は、配向膜上での液晶分子の配向によりその機能を発現しています。この配向膜作成には長くラビング処理が用いられてきましたが、一方でポリイミドに対して直線偏光した紫外光をポリイミド膜に照射することでも液晶分子の配向を制御することが可能です。このポリイミド薄膜に対して、ラビング及び紫外光照射処理を行うことで、ポリイミド表面のそれぞれの官能基がどのように配向しており、液晶のプレチルト角を制御している官能基はどれか、を定量的に解析しました。ラビング処理では、ポリイミド主鎖及び側鎖が全てラビング方向に対して一軸配向を示すのに対し、紫外光照射では光応答性官能基だけが異方性を示し、面内配向角と傾き角が液晶のプレチルト角を制御して要因になっていることを突き止めました。
R. Nakano, T. Miyamae,J. Phys. Chem. C,DOI; 10.1021/acs.jpcc.5c08328.

PNIPAM表面、PNIPAM/水界面の研究

PNIPAM側鎖イソプロピル基の配向の定義
 感温性高分子ポリ(イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM) について、その表面および水中での温度転移挙動をSFG分光を用いて解析しました。側鎖末端イソプロピル基の配向を定量的に解析し、空気中ではイソプロピル基を上に向けて配向しています。このPNIPAMは32 ℃で下限臨界溶液温度(LCST)を持つため、LCST前後での水界面での挙動を内部全反射条件下SFG で測定、解析を行いました。この結果イソプロピル基の配向はLCST前後で大きく変化しませんが、主鎖のCH2の配向が大きく変化していることがわかりました。また CH3、CH2いずれのピークもLCSTより高温でRed-shiftしており、これはアルキル鎖の水和によって起きていることを明らかにしました。
T. Miyamae et al.,Macromolecules,40, 4601-4606, 2007.

ブロック共重合体表面の研究


PS-PME3MAブロック共重合体の化学構造
自発的に表面に偏析するブロック共重合体PS−PME3MAについて、その表面構造を中性子反射率、XPS、SIMS、およびSFG分光で解析しました。SFG分光では表面にはPSセグメントが現れておらず、側鎖が表面に偏析していることが明瞭に確認できます。また定量的な解析から、高分子表面における側鎖末端メチル基の配向を定量的に決定しました。
T. Miyamae et al.,e-J. Surf. Sci. Nanotech.,4, 515-520, 2006.

H. Yokoyama et al.,Macromolecules,38, 5180-5189, 2005.

PET/アルミナ界面の研究

AlOx/PET界面のC=O領域のSFGス ペクトル
PET表面およびPET表面にアルミナ薄膜を積層させた界面について、SFG分光を用いてその分子挙動を解析しました。PET表面のC=O伸縮振動はプラズマ処理によって増大しますが、この増加はPET/アルミナの密着性の増加とよく対応しています。また未処理のPETとアルミナとの界面では 1685 cm-1にC=O・・・Alに由来するピークが見ることができました。しかしこの結合が界面に存在するかどうかは密着性とは相関がなく、むしろ化学結合によるピークがみられる方が密着性が悪いという結果になりました。このことから,解析を進めたところ,PET/アルミナの密着強度は表面のアモルファス化によって達成されていることを明らかにしました。
T. Miyamae and H. Nozoye,Appl. Phys. Lett.,85, 4373-4375, 2004.

有機―無機ハイブリッド材料表面の研究

有機無機ハイブリッド膜のSFG
 poly(vinyl alcohol) (PVA)とpoly(acrylic acid) (PAA)のブレンド高分子にゾル―ゲル法によりシリカをナノ分散させたハイブリッドコート材料についてX線光電子分光(XPS)および和周波発生分光法 (SFG)を用いてその表面構造を解析しました.PVAとPAAを架橋してブレンドした高分子表面は両方の高分子がバルクのモル比に従い,等しく表面に現れているのに対し,これにシリカをナノ分散させた場合には表面はPAAが主成分となり,シリカは表面に析出していません.これはPAAと結びついたシリカが膜内 に均一に分散し,表面エネルギーを低下させるために最表層はPAA主鎖が覆うためであると考えられます.また,水蒸気存在下でもその表面は変化せず,ガス透過性とハイブリッド材料の表面構造は直接の相関がないことをつきとめました.
宮前孝行他,高分子論文集,65, 73-79, 2008.