高分子界面の研究



高分子の表面・界面は、親水性・疎水性、摩擦、接着、生体適合性など、求める用途に応じて多様な形態をとり得ます。また、接する環境や条件によっても分子の配向を変えることで様々な機能を発現します。

PNIPAM表面、PNIPAM/水界面の研究

PNIPAM側鎖イソプロピル基の配向の
定義
 感温性高分子ポリ(イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM) について、その表面および水中での温度転移挙動をSFG分光を用いて解析した。側鎖末端イソプロピル基の配向を定量的に解析し、空気中ではイソプロピル基が上に向いて配向していることがわかった。このPNIPAMは32 ℃で下限臨界溶液温度(LCST)を持つため、LCST前後での挙動を内部全反射SFG で測定、解析を行った。この結果イソプロピル基の配向はLCST前後で大きく変化しないが、主鎖のCH2の配向が大きく変化してい ることがわかった。また CH3、CH2いずれのピークもLCSTより高温でRed-shiftしており、これはアルキル鎖の水和によって起きていることが明らかになった。
T. Miyamae et al., Macromolecules, 40, 4601-4606, 2007.

ブロック共重合体表面の研究


PS-PME3MAブロック共重合体の化
学構造
自発的に表面に偏析するブロック共重合体PS−PME3MAについて、その表面構造を中性子反射率、XPS、SIMS、およびSFG分光で解 析した。SFG分光では表面にはPSセグメントが現れておらず、側鎖が表面に偏析していることが明瞭に確認できた。また定量的な解析から、高分子表面における側鎖末端メチル基の配向を決定した。
T. Miyamae et al., e-J. Surf. Sci. Nanotech., 4, 515-520, 2006.

H. Yokoyama et al., Macromolecules, 38, 5180-5189, 2005.

PET/アルミナ界面の研究

AlOx/PET界面のC=O領域のSFGス ペクトル
PET表面およびPET表面にアルミナ薄膜を積層させた界面について、SFG分光を用いてその分子挙動を解析した。PET表面のC=O伸縮振 動はプラズマ処理によって増大するが、この増加はPET/アルミナの密着性の増加とよく対応している。また未処理のPETとアルミナとの界面では 1685 cm-1にC=O・・・Alに由来するピークが見られた。しかしこの結合が界面に存在するかどうかは密着性とは相関がな く、むしろ化学結合による ピークがみられる方が密着性が悪いという結果になった。PET/アルミナの密着強度は表面のアモルファス化によって達成されていることが明らかとなった。
T. Miyamae and H. Nozoye, Appl. Phys. Lett., 85, 4373-4375, 2004.

有機―無機ハイブリッド材料表面の研究

有機無機ハイブリッド膜のSFG
 poly(vinyl alcohol) (PVA)とpoly(acrylic acid) (PAA)のブレンド高分子にゾル―ゲル法によりシリカをナノ分散させたハイブリッドコート材料についてX線光電子分光(XPS)および和周波発生分光法 (SFG)を用いてその表面構造を解析した.PVAとPAAを架橋してブレンドした高分子表面は両方の高分子がバルクのモル比に従い,等しく表面に現れているのに対し,これにシリカをナノ分散させた場合には表面はPAAが主成分となり,シリカは表面に析出していない.これはPAAと結びついたシリカが膜内 に均一に分散し,表面エネルギーを低下させるために最表層はPAA主鎖が覆うためであると考えられる.また,水蒸気存在下でもその表面は変化せず,ガス透過性とハイブリッド材料の表面構造は直接の相関がないことが明らかになった.
宮前孝行他, 高分子論文集, 65, 73-79, 2008.