接着接合界面の研究



接着接合の界面は。「埋もれた界面」であるため、調べる手法が限定されます。SFG分光法はこの未踏の界面で何が起こっているのかを知ることのできる手法の一つです。


エポキシとシラン処理アルミニウム表面におけるルイス酸塩基相互作用と接着強度
 シランカップリング剤で処理した材料表面に存在する水酸基と、エポキシ接着剤に含まれるアミン系硬化剤との間に働く「酸と塩基の相互作用」が、接着性を高める重要な要因であることを明らかにしました。さらに、シランカップリング剤に含まれる水酸基のルイス酸性度の違いに注目し、実験と大規模計算シミュレーションを組み合わせることで、分子レベルで強い接着を生み出す、これまで見過ごされてきた界面での相互作用の役割と接着強度との関係を発見しました。
この成果により、自動車や航空機で進められている異なる材料同士を接合する技術において、接着の長期安定性や信頼性を高めるための新たな指針が示されました。今後は、より高性能な接着剤や表面処理技術の開発につながるとともに、さまざまな産業分野への応用が期待されます。
K. Kobori et al,RSC Appl. Interfaces, 2026.


エポキシ高分子とイソシアネートプライマーとの界面反応の直接観察
 樹脂表面への接着剤の接着力を高めるために、プライマーを塗布する工程が良く用いられる。エポキシ樹脂に対する接着力を高めるものとしてイソシアネート基を有するプライマーを塗布した際の界面の化学反応をSFG分光法で検討した。エポキシ樹脂表面には高分子分子鎖内にOH基を有しており、表面にもOH基由来のSFGバンドが観測される。この表面をイソシアネート基を2つ有する分子を含む溶液に浸漬すると、ウレタン結合形成によるC=Oが観測され、OH基の消失が見られた。また、洗浄後にはイソシアネート基のSFG信号が残っており、表面は接着剤の水酸基と反応しやすい状態を形成していることが確認された。
K. Sensui et al.,Chem. Commun.,55, 14833 (2019).

ポリプロピレンに対するプラズマ表面処理の効果の検証


プラズマ処理したポリプロピレン表面のOHおよびC=
O伸縮領域のSFGスペクトル
ポリプロピレンに対して大気圧プラズマによる表面処理を行った時の表面の分子挙動をIR、Raman、SFG、STEMにより検討を行っ た。IRではプラズマ処理回数に応じてC=OやOH基の増加が見られたがSFG分光では最表面にはこれらはほとんど現れておらずバルク側に潜っていること がわかった。Raman測定から、プラズマ処理により表面付近の非晶性分の増加が見られ、STEMの結果と良く対応している。また接着材に対する接着強度 も非晶質の増加と対応関係が見られており、官能基の増加が接着強度に直接関連するわけではないことが示唆された。
T. Sato et al.,Surf. Sci.,677, 93-98, 2018.

プラズマ処理と火炎処理の比較検討

プラズマ処理およびフレーム処理したポリプ
ロピレン表面のSFGスペクトル
 ポリプロピレンに対して接着強度を付与するための表面処理方法としてのプラズマ処理とフレーム(火炎)処理の違いについての検討を、SFG、赤外吸収、ラマンを用いて行った。何れの処理も接着力の発現が見られたが、赤外吸収ではカルボニル基、水酸基の存在量には大きな差が見られた。SFG分光では両者で表面の分子配向の違いが見られたが、いずれの処理においても表面にカルボニル基の存在は確認されず、C=OやOHは表面処理後速やかにバルクに潜っていくものと考えられる。一方ラマン散乱による表面近傍のポリプロピレンの結晶性の変化を見てみると、いずれの表面処理でも非晶質のポリプロピレンが増加していることが分かった。接着力の発現には、官能基の存在量よりも表面近傍の飛翔層の果たす役割が重要であることが明らかとなった。
T. Sato et al.,Int. J. Adh. Adhesives,93, 76-82, 2019.

粘着剤/剥離剤界面の研究


粘着剤/剥離剤界面のSFGスペクトル
粘着テープの基材の裏面には、テープ同士がくっついてしまわないように剥離剤が塗布されている。この剥離剤と粘着剤の界面での剥離剤の分子配向を、SFG分光により解析した。剥離剤として長鎖のアルキルを側鎖に持つ高分子PEVODCについて、製膜直後とアニールしたものの表面のSFGスペクトルではアニールにより側鎖が表面によく配列している挙動が確認された。製膜後のアニールにより剥離性能は向上するが、この配列構造により、粘着剤が剥離しやすくなっていることが示唆された。また粘着剤と剥離剤を張り合わせた後に加熱をした界面のSFGスペクトルでは、PEVODCの側鎖のSFGピークの消失が確認されたが、これは加熱によりアルキル側鎖が粘着剤側に部分的に拡散貫入していることを示しているものと考えられる。
T. Mori et al.,Int. J. Adh. Adhesives,82, 166-172, 2018.