千葉大学融合科学研究科附属 分子キラリティー研究センター

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〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町1−33

研究概要OVERVIEW

   
   
     
   

分子キラルフォトニクス研究部門          リーダー 尾松 孝茂



研究グループ1.キラルな光によるナノ物質の構造・物性制御(尾松、音、宮本、青木)
深紫外からテラヘルツの波長域で偏光・波面に由来する光のキラリティーを自在に制御する。さらに、 光のキラリティーと物質の相互作用を介してナノ物質の構造制御、 電子状態の制御、化学反応増強、生体分子操作を狙う。具体的には、構造的キラリティーに由来する螺旋波面二色性を示すメタマテリアルの創成、フラレーンの電気特性制御、量子ホール電子系における電子のキラリティー(スピン・軌道角運動量)制御、分子シグナル部門と連携による新たなタンパク質結晶成長法の開発とその構造解析、分子モーターにおける生命活動エネルギー生成メカニズムの解明などを推進する。

研究グループ2.特異な光・電気機能性を有するキラルナノ構造材料の創出(小林、中村)
円偏光発光性材料は、3Dイメージングやキラルセンサー、セキュリティーペイント、量子情報通信といったキロプティカル技術への展開が期待されている。本研究グループでは、DNAやタンパクなどのキラリティーを有す生体高分子材料と、高発光性や電気化学応答性を示す金属錯体や有機分子の複合化により、光学活性な高次構造を有する新規な光・電気機能性ナノ構造体を創製する。高次構造化による新たな機能性の付与により、円偏光発光性の高機能化を目指している。

研究グループ3.キラリティーをもつ低次元ナノ構造体の幾何構造と電子状態(石井、吉田<弘>、Krueger、坂本、山田)
有機半導体や重元素などで構築された低次元ナノ構造体の電子状態に着目した研究を推進する。これらの物質には、幾何学的構造や電子スピンに特徴的なキラリティーをもつものがある。最先端の光電子分光法、逆光電子分光法、走査プローブ顕微鏡などの実験手法と第一原理計算による理論的手法を駆使することで、このような幾何構造のもつ対称性と電子状態の相関を解明・制御し、これにより初めて生まれる新奇物性を探求する。


分子シグナル研究部門               リーダー 村田 武士




生命は分子間の厳密なキラル認識によって誘発されるシグナル伝達によって、様々な生命現象を引き起こしている。我々はこのシグナル伝達に関与するタンパク質およびリガンド分子のキラリティーおよび認識メカニズムに着目し、創薬への応用を見据えつつ以下の研究を遂行する。

研究グループ1. 創薬標的タンパク質のX線結晶構造解析(村田・小笠原・安田グループ)
 創薬標的タンパク質の立体構造情報はドラックデザインなどの創薬に重要であるが、発現・精製・結晶化が難しく、構造研究が遅れていた。我々は、標的分子を理論的に熱安定化する変異体予測システム、結晶化を促進する機能性抗体の作製技術および共結晶化構造解析技術を開発し、創薬標的タンパク質のX線結晶構造解析を行うための基盤技術を構築してきた。本研究では、分子キラルフォトニクス研究部門と連携し、キラル光を利用した結晶成長のコントロール技術やダイナミクス制御技術を開発する。また、キラル分子化学研究部門と連携し、構造安定化キラル分子や新規阻害剤を創出する。得られたキラル化合物や開発技術を駆使して創薬標的タンパク質のX線結晶構造を解明し、創薬に貢献する。

研究グループ2. 細胞増殖の永続性を保証する分子シグナルの解析(松浦グループ)
 細胞の最も基本的な機能である細胞の増殖は、多種多様な分子シグナルにより複合的に制御されており、その機能異常は癌および老化などの疾患に直結する。本研究では、酵母および哺乳類培養細胞を用いて、細胞増殖を継続するために必須な監視機構、品質管理機構を解析し、その破綻による細胞老化の分子機構を明らかにする。また、キラル分子化学研究部門との連携により、細胞増殖に関わるシグナルを標的とするキラル化合物を探索する。得られた化合物を利用して細胞増殖に関わるシグナルネットワークの研究を推進し、疾病に関する新たな標的治療法の開発に貢献する。

研究グループ3. モータータンパク質ミオシンの運動および輸送方向の制御(伊藤グループ)
 モータータンパク質であるミオシンはオルガネラや小胞の輸送,張力発生などを細胞内における運動の主要なはたらきを担っている。私達は分子生物学的に改変したミオシンによる生体内および生体外における応用化への試みをおこなっている。本研究においてはフォトリソグラフィをおこなうことによりμmオーダーの微小トラックをもつ基盤を作製する。そしてこの微小トラック上でミオシンの運動方向を制御することにより,従来の工学的装置では不可能である微小領域における流動方向、物質の運動方向の制御が可能な生体ナノマシンを開発し、創薬に貢献する。

研究グループ4. 生理活性糖鎖の立体選択的構築法と生体材料化に関する研究(西田・土肥グループ)
糖脂質や糖タンパクとして生体膜表面に発現している糖鎖は、糖認識タンパク質との厳密な分子認識を経て細胞接着や感染など様々な生命現象を引き起こす。糖鎖は不斉炭素を数多く有するため立体構造は多岐にわたるが、ある一点のキラリティーを変換するとその生理活性を喪失したり別の活性を示すなど、糖鎖の立体構造と生命現象の相関関係は不明な点が多い。本研究では、従来法にとらわれない新しい概念を基調にした糖鎖の立体選択的構築法を開発し、天然型および一部のキラル炭素を変換した生理活性糖鎖を化学合成することによって、糖鎖の持つキラリティーが関与する生命現象の解明に貢献する。

研究グループ5. 光免疫誘導による非侵襲性医療の創生(阿久津・菅波・田村グループ)
最新のハイテク機能を搭載した手術支援ロボット「ダヴィンチ」の登場により、医療現場では、患者さんの負担が少ない低侵襲性治療が可能となった。私たちは、波動デバイスである医療機器(ラジオ波・近赤外線)とナノデバイスである医薬品(光感受性物質)を融合した免疫誘導シグナルカスケード制御により、患者さんの負担がさらに軽減する非侵襲性治療法の創生を目指している。

研究グループ6. ゲノム情報解析(高橋グループ)
生命科学におけるゲノム解析技術の進展に伴い、大量のゲノム配列情報が取得可能であり、その中から意味のある情報を抽出することは必須の課題である。私たちは、情報解析技術の開発や応用を通して、新規機能モチーフの探索を試みている。さらに、新たな生命機能の探索を実現するために、次世代シーケンサーの新規応用手法の開発を目指している。また、生体内の金属代謝機構をモデルに、数理解析によって、生体反応の理解を深める研究も展開している。

研究グループ7. 細胞機能制御のための分子スイッチの開発とその分子進化工学(河合・梅野グループ)
タンパク質と低分子化合物との結合・解離過程は,分子キラル認識のひとつの究極のかたちと云える。本研究では,様々な分子との結合を端緒とした,タンパク質の構造・物性のダイナミックなスイッチ機構を創りだし,分子進化工学を用いて徹底的に改良する。細胞内のタンパク質の凝集・離散や細胞内での局在化,遺伝子機能の自在なON/OFF制御の実現が目標である。

研究グループ8. 抗真菌薬開発を目指した分子標的探索とシーズ化合物探索(知花グループ)
人口の超高齢化と高度医療の発達に伴い、易感染患者が増加し真菌による日和見感染症が問題となっている。さらに最近の知見によるとアルツハイマーの発症と真菌感染の関連も示唆されている。当グループでは、病原性カンジダ菌を用いて約5,000個の全遺伝子について体系的且つ網羅的なオリジナル遺伝子改変ライブラリーの構築を進めており、これを用いた抗真菌薬の標的探索、ならびに千葉大学オリジナルの化合物ライブラリーを用いた抗真菌薬シーズ探索を行う。

研究グループ9. 分子キラリティに基づく生理機能の差異と分子標的創薬(安西・降幡・橋本グループ)
生体の恒常性が破綻することで生じる疾患・病態の改善のために行われる「薬物」による治療は臨床医学の基本である。細胞膜に存在するレセプター・チャネル・トランスポーターなどの膜タンパク質は主要な薬物受容体であり、これらの膜タンパク質の基質(リガンド)のキラリティはその認識機構とそれに続くシグナル伝達の特異性に影響する重要な因子である。本研究では主にキラル認識の生理機能変化の分子機序解明から疾患・病態との関連性を明らかにする中で、膜タンパク質を分子標的とするキラル化合物創生による創薬を目指す。


キラル分子化学研究部門              リーダー 荒井 孝義



触媒化学、合成化学、マテリアル化学、生物有機化学を連動させ、光学活性化合物の新たな構造と機能を創出する。光渦などの新しい外部エネルギーも取り入れ、ユニークなキラル分子化学を推進する。研究グループが造り出すキラル分子を集約し、千葉大学オリジナルの化合物ライブラリーを構築し、新規生物活性物質などの創製を目指す。

研究グループ1.複雑系キラル分子の触媒的不斉合成(荒井<孝>、鍬野)
独自の探索システム『Solid-Phase Catalysis/CD-HTS』を用いて、生物活性が直裁的に期待できる複雑系分子をテーラーメードに供給する自在分子構築法を確立する。協奏機能などの高機能性不斉触媒開発の新概念を創出する。

研究グループ2.キラル分子の絶対不斉合成と触媒的不斉合成(坂本、三野、吉田<泰>)
コングロメレート結晶を利用したアキラル分子からの絶対不斉合成および分子のねじれを不斉源とする触媒的不斉合成を利用して効率的なキラル分子の構築法を確立する。

研究グループ3.複雑天然物の効率不斉合成(西田、荒井<秀>、原田)
天然物・医薬品素材の不斉合成を通して、キラル分子の独自構築法や新しい骨格形成反応を確立する。新規キラル触媒及び不斉反応の創出を目指す。

研究グループ4.元素の特性を活かしたキラル分子構築法の開拓(柳澤、吉田<和>、森山)
元素の新たな特性を見つけ、その特性を活かした触媒または反応剤を創製し、新たな反応システムに基づくキラル分子合成反応の開発を目指す。

研究グループ5.天然物を基盤とした生物活性物質の創製(荒井<緑>)
天然素材や天然物を基盤とした多様性を有する化合物から再生医薬やがん治療に役立つ化合物を見いだし,その作用機序解明を目指す。

研究グループ6.キラル分子集合体の構築(矢貝)
超分子化学に立脚した分子エンジニアリングを駆使することでπ共役系分子からなる超階層性キラル分子集合体を構築し、新機能を創発する。さらに光応答性分子を基軸とした分子デザインにより、新概念に基づくキラル分子集合体の構築法を確立する。

研究グループ7.触媒反応を駆使した複雑分子合成(根本)
複雑な縮環状構造を持つヘテロ原子含有化合物や多数の不斉中心を持つ化合物の合成法開発を基盤に、医薬化学研究に資する分子群の効率供給法を創出する。また、それらを実現するための新しい触媒系の開発も行う。

研究グループ8.結晶工学に基づくキラル分子変換法の開発(赤染)
アミノ酸などの天然のキラル分子を化学変換し、分子が分子を取り込む包接現象を最大限に利用した結晶工学に基づく光学分割法やキラル変換法を開拓する。